生産者と消費者の距離が遠のくことで起こる海の問題とは-NGOうおゑん-
1. 魚食文化の歴史
日本の魚食の歴史を遡れば現在確認されている限り縄文時代へ至ります。当時は旬の魚を必要な分だけを獲って食す「漁」が日々行われていました。また、獲れた魚を長期保存させ、捨てることのないように干物等の食文化が成長していきました。
時は流れ日本にお金が流通するように。魚が対価に変換され始めた頃から「漁」が「漁業」という生業に変わり利便や効率を追求する時代へとシフトしていきます。
戦後、日本は産業復興を推し進めるために漁業に力を入れてきました。日本の漁業者は世界中を巡り遠洋漁業を含め、日本の水産業は1980年代に最盛期を迎えます。一方で日本は都市化が急ピッチで進み、都市と地方の分断が起こっていきました。
次第に生産と消費の距離は遠のき、かつての水産大国の栄光も虚しく現在の水産業は衰退の一途を辿るばかりです。
2. 現代の食生活
生産と消費の距離が遠のいた現代の都市部での食生活は主にスーパーマーケット等の大手量販店にシフトしました。
1匹の魚が売っている姿は珍しく、水産物のほとんどが調理、加工されたものになっています。あなたがいつも手に取る水産物はどれほどの情報が載っていますか。そのほとんどは「生産者の情報」「商品の流通」「いつ・どこで獲られたのか」などの情報が薄いはずです。いわゆるトレーサビリティの不足。
地元の天然魚を捨てていて(未利用魚)、遠く海外から魚を仕入れているなんてざらにあります。確かに調理されたものを買う食生活は便利ですが、今一度魚と向き合い食の背景に関心を寄せることが大切なのではないでしょうか。
3. 距離が遠のく問題とは
生産と消費の距離が遠のくことの何が問題なのでしょうか。まず第一に危惧しなくてはならないことが消費者が生産や流通、廃棄と全く関わりのないただの消費者になってしまうことです。
もし漁業のように生産の現場において問題が積もっていたとしてもただの消費者は気づくこともできませんし課題解決にすら至りません。「消費者」から「生活者」へ。まずは海に関心を持つ人増やすことが生産と消費の距離を縮める上での目標です。
4. 距離を縮めるためにできること
現在行っているものは大きく分けて3つの事業です。
まず都会で行っているものが「魚捌き教室」。味が良いのに知名度の低さなどから捨てられてしまう未利用魚(みりようぎょ)を仕入れ、海の恵みと学びを提供しています。
次に漁業者のオンライントークイベント。漁師の生活や日々の魚料理への知恵を教わったりと刺激のあるバーチャルでのイベントです。
3つ目は、漁業体験研修。生産地に足を運び漁業者と共に日々の生活を体験し、魚を捌きながら海への理解を強める研修です。